【映画レビュー】『花束みたいな恋をした』

こんにちは。吉岡てんぱです。
この春、大切な友達が転勤してしまうことになり、休日のひとり時間が長くなることが確定。何か新しいことに挑戦してみようと思い、映画の鑑賞記録を残していくことにしました。
大切な友達との休日の過ごし方は毎回ほぼ固定していて、
午前8時~9時くらいに始まる映画を観る→朝ごはんと昼ご飯を兼ねた軽食を摂る→それぞれ好きなお店に買い物に行く→パフェやアフタヌーンティーを楽しむ→解散
というとてつもなく心地よい過ごし方だったのですが、それももうなかなかできなくなりそうです。
と、悲しい気持ちを抱えながら観たのが『花束みたいな恋をした』でした。
めちゃくちゃ、刺さりました。
『花束みたいな恋をした』が刺さるのは”雰囲気系映画”が好きな人と、陰キャ。
『花束みたいな恋をした』は、ドラマ『カルテット』(松たか子・高橋一生・満島ひかり・松田龍平)や『最高の離婚』(瑛太・尾野真千子・真木よう子・綾野剛)、映画『ファーストキス』(松たか子・松村北斗)を手掛けた脚本家・坂元裕二氏のオリジナル作品を映画化したもの。
さらに、監督は土井裕泰氏。そう、あの名作『いま、会いにゆきます』(竹内結子・中村獅童)を産みだした方が監督されているので、もう刺さる方はなんとなく直感的に「観なきゃ」と思われるのではないでしょうか。
主演は有村架純さん(八谷絹)と菅田将暉くん(山音麦)。
終電を逃したことから出会った絹と麦は、一卵性双生児かと思うくらい思考が同じ。履く靴も同じ、読んでいる本も同じ、好きな映画も同じ、好きな音楽も同じ。
そんなふたりが惹かれ合わない理由はない!!
けれど、大人になっていくこと、そして時間の流れは残酷で…。ふたりは何も変わっていないけれど、ふたりを取り巻く環境が変わることで苦しくなってしまう感じ。誰もが一度は向き合ったことがあるのではないでしょうか。
そしてふたりが出した結論も、ちゃんとふたりらしく素敵なものでした。あまり多く語るとネタバレになるので、ひとまずストーリーの紹介はこの辺で。
▼▼▼以下ネタバレがあるのでご注意ください▼▼▼

この先、自信が陰キャであることを踏まえ、陰キャ・陽キャという表現を多用しています。
そういった括りが苦手な方は、この先は読まずにそっとブラウザバックすることをお勧めします。
つらいシーンもなんだかつらく感じない、ポジティブモンスター映画だと思った
絹ちゃんと麦くんが出会い、ふたりの時間を重ねていく日々。とにかく穏やかで丁寧で、「こんな日々が永遠に続いてほしい」と誰もが思うと思います。これぞ、陰キャの理想のカップル(※含:偏見)。
私自身、映画や小説の話で冒頭で書いた彼とつながっているので、絹ちゃんのように見た目も中身もかわいらしい女性だったら、人生変わっていたかもしれない…と妄想してしまいました。
まぁ、結果うまくはいきませんでしたけど。
女性の気持ちも、男性の気持ちも”陰キャあるある”
勢いでミイラ展に誘ってみよう
今日、絶対に告白しよう
生活のために働こうと決意する側、好きなことを仕事にしてしまった側
仕事に蝕まれていく趣味に使う時間
「じゃあ」が増えていく現実、イライラするも喧嘩はできない現実
せめて笑顔で別れようと決意する
別れたけど、別に嫌いになったわけじゃない
私自身が陰キャなのでわかるんです。これ、根っからの陽キャから見たらたぶん、「くだらなっ!!!」「うざっ!!!」って笑われるんですよね。
「さっさと告白して、仕事に影響が出てしまってもいい、好きなことを楽しんで、相手にイライラすれば喧嘩して、笑顔で別れとか意味わからないし、嫌いじゃないなら別れなきゃいい」
陽キャの友達がそう言う画がすぐに浮かびました。しかし幸い私は陰キャ。「うんうん」「わかるわかる」と思いながら観進めるのです。
映画の最初から最後まで一貫して丁寧に、自分の好きなものを大切にしながら暮らそうとする絹ちゃん。
生活のために少し犠牲になってしまった麦くん。
”分かり合うための喧嘩”をしないから、いつもわかったふりをしてしまうから、少しずつ、でも着実に積みあがる歪みが静かに爆発した感じですよね。42歳になったおばさんの私なら、
「もっと本音をぶつけ合いなさい!」
と怒っちゃうかもしれません。でも二十歳そこそこの私も、同じような経験があるので、若いふたりだからこそ経験する”ステップ”のようなものなのかもしれません。
この苦い経験を糧に、次の恋はうまくいってほしい、そう思うしかない切なさを今でも感じています。
それぞれの世界を持ちすぎた故の結果なのかも
もし絹ちゃんが、転職を考えはじめた時点で麦くんに相談していたら、すべては変わっていたのでは?と思います。
「やりたいことがあるんだよね。収入は○○万円くらい。休みは不規則になってしまうけど、どう思う?」
絹ちゃんがそう言ったなら、麦くんは「やめておけ」とは言わないと思うんです。麦くんの中に、多少嫉妬のような気持ちがわくかもしれませんが、もしかしたら「イベントとのチラシのイラスト描く仕事とかあったら言って!」とか、、、何かよい方向にふたりが進んでいった可能性があったかもと、少し悲しい気持ちになりました。
普段ふたりがどれくらいお互いの仕事の話をしていたかわかりませんが、良くも悪くもふたりはそれぞれの世界を大切にして、お互いあまり干渉しないように気をつけていた気がします。
しかし、別々に暮らしているカップルならそれでもよいのでしょうが、同棲していて、ふたりのために就活をはじめ、働いている麦くんがそばにいるんです。
絹ちゃんが転職する頃には、少し冷めてしまっていたから仕方ないのかもしれませんが、お金や時間に関係することはちゃんと相談して、お互い理解しておいた方がよいと思いませんか。
絹ちゃんと麦くんは思考が似ているので、勝手に転職を決めた絹ちゃんは、もしかしたら仕事ばかりに時間を割く麦くんへの「反抗」だったのかもしれませんが、ふたりを応援していた身からしたらタイプリープしてあのシーンを変えて、ふたりを結婚まで導きたいです。
最後までポジティブ、陰キャの理想像
私は離婚を経験していますが、夫との最後の日、笑顔で元気にお見送りしました。あんなに憎み合っていがみ合ったのに、です。
絹ちゃんと麦くんを「陰キャ」と縛りすぎると反感を買うかもしれませんが、陰キャは実行できるか否かは置いておいて、何か大きなことをするとき、ひとまず理想的な想像をすることが多いです。物事が少しでも良い方向に進むように。
映画や本の観すぎなのかもしれませんが、クセなのでもうどうしようもありません。
なので、辛い別れも笑顔で凌ぐし、別れを決めた後はある種の重圧から解放されて楽しく過ごせてしまうんです。
Yahoo!知恵袋などでも、
「笑顔で別れる意味が分かりません」
「別れたのに楽しそうに暮らしている意味が分かりません」
といった投稿を多数見ましたが、こればっかりはもう、わからない人には一生理解できない感情だと思います。
もしかしたら、あの笑顔の裏で泣いているかもしれません。しかし、それを相手には絶対に見せません。困らせちゃうのは本望ではありませんから。精一杯の気づかい、空気読みです。
いろいろ言われるラストですが、私は、陰キャの理想的別れ方&別れた後の過ごし方だと思いました。
陽キャの彼氏と別れた陰キャの友達が、「別れた後も会いたいって言ったら、LINEをブロックされたっぽい泣」と話していましたが、人間関係に対する価値観は人それぞれだし、生まれ持ったものも大きいと思います。
理解への諦めも肝心。
この辺りは、理解できない人に理解しろと強制するものではありませんし、理解できる人は共感してひとりで「うんうん」と頷いていればいいと思った次第です。
『花束みたいな恋をした』タイトルの意味と個人的感想
『花束みたいな恋をした』というタイトルの意味が分からないという声もたくさんあるようで、みなさんそれぞれの考察を公開されています。
私は、
絹ちゃんと麦くんというメインの花(バラとか)の周りに、友達や同僚など隙間を埋める花(カスミソウとか葉っぱとか)があって、それぞれ別々の場所にいたのに、出会って束ねられて交差して美しく華やかになる。
しかし、時間とともに新鮮さや彩りを失い、でもふたりの関係性は美しいドライフラワーになった。
という意味ではないかと思っています。いろいろあったけど、ふたりにとってプラスになる時間だったと信じたいです。
また、この作品を観てよかったか?友達に勧めるか?と聞かれたら、私は即答します。
「はい!!!!!」
感情やストーリーの起伏がほとんどなく、退屈だと思われる方も一定数いるそうなので、激しめの映画が好きな方にはお勧めできませんが、日本の映画特有のぼんやりとした雰囲気が好きな方、ちょっと人生に疲れた方、恋愛でつまづいている方にはぜひ見てほしい作品です。
有村架純さんと菅田将暉くんが美しい。
衣装やインテリアがかわいい。
映画を観終わった後、少し丁寧に生きてみようかなと思わされます。それ以外に得るものは…特にありません。これは、良くも悪くも、です。
そう考えると、「映画から絶対に何かを得たい!!!」という人にもおすすめできませんね。
今より少し心をうるおせる、そんな感じの作品です。
